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ディープ・ダイブ、ディープ・スカイ
2007年 03月 16日 (金) 21:43 | 編集
―ほら、そこに空があるよ・・・

幼い頃いつも一緒だった幼馴染が空を見上げながらそう呟いていたのを思い出す。あぁ、本当だね・・・空があるよ。深い底に沈みながら見上げた水面はあの時みた空そのものだった。小さな魚が群れをなし、鳥のように渡るのを見届けてからゆっくりと瞳を閉じた。


「ありがとうございました~。」
音がこもった独特の響きを持っている。何していたんだっけ、というのがまず最初に頭に浮かんだこと、次に考えたのは視界の端に移る人影をみてあれは誰だろう、と。そして最後にここはどこだ?そう思って声を出そうとしたが何も言うことは出来なかった。
「お、気がついた。生きてるか~?」
上から声が近づいてくる。顔も。黒く日焼けした肌はどこか異国を思わせる。微かに海の香りがした。それにしても顔、近いぞ。
「まあ、アレだ。何があったのかはこの際聞かない。人には事情ってモンがあるからな。でも遠慮すんなよ?ゆっくりしていけ。」
こっちは何も言っていないのに、勝手にベラベラと訳の分からないことを言っている。腹が空いたら言えだとか、俺の名前は「コウダ アキラ」だとか、でも皆からはアッキーと呼ばれているからそう呼べだとか。
「お・・・」
「何?どうした?何かして欲しいことでもあるか?」
「・・・トイレ」
コウダ、いやアッキーはにやっと笑って動けない私に向かってこういった。
「廊下に出て右奥だ。歩けるか?」
やけに楽しそうな顔。なんかコイツむかつく。

結局、トイレには行くことが出来た。動かせないと思っていた体はちゃんと動いたし(でも起き上がるときに手を貸してもらったが)、水を貰ったら不思議と落ち着いた。
アッキーはどうしてここに私がいるのかを説明している、一時間前から。
「でな、今日は最高の日だ、俺最高!って店を出たんだよ。そのときはまだ夕方前だったかな~。とにかく何かいいことあるぞって、そんな気がして河口沿いの道をずーっと歩いていたわけ。そしてさ。最近海にいってねーな、なんて思ってそのまま右にこう曲がって言った訳よ。」
前置きが長いから省略するがアッキーは、江田章と書いて高校三年だったという。だったというからには中退したのかといえばそうではなく、本人曰く、「今は休憩中」なんだそうだ。とにかく、ある日砂浜に海藻にくるまれた私を発見したらしい。最初は変な格好をしたやつが砂浜に寝ているな~、いい天気だから変わった奴がわいてくるな~なんて思っていたという。
「でさ、しばらく観てたわけ。起きねーかな?って。10分たってもぜんぜん動かないから飽きて足元にあった貝殻ぶつけてみたわけよ。でも起きない。あれ?と思ってそばによって蹴飛ばしてみても起きないから、あ~、これってもしかしてアレかな?って思ったわけ。」
蹴飛ばす?なんて奴だ。倒れている奴にすることか!?
「まあ、怒るなって。ほらこれでも食って落ち着けって。腹減ってんだろ?カルシウム不足だぜ。」
出された皿をひったくるようにして受け取るとそこには丸ごと揚げたエビが鮮やかな朱色をして載っていた。
「なんだ・・・これ?」
「え?知らんの?エビの素揚げ。うまいぜ~。おやつにぴったり。」

結局皿の上のエビは全部私の胃に収まった。確かに美味しい。出されたサイダーを飲みながら余韻に浸っているとアッキーもサイダーのボトル片手に隣にやってきた。
「で、落ち着いたようだし、あんた名前は?」
「さ・・・」
「サ?」
「・・・」
「なに、もしかしてキオクソーシツって奴?カーッ、ほんとにあるんだな~。なんかドラマみたいだな。」
「サカサキ アキオ。」
「なんだ名前あるじゃん。どう書くん?」
「坂道の坂に埼玉のこっち側が山の崎、明るいに雄。」
「おー、じゃあ、お前もアッキーじゃん。でもダメな。俺が先に使っているから。」
二カッと笑うと、じゃあなんて呼んだらいいかな、なんて一人ぶつぶついっている。
「アッオーなんてどう?」
「何それ?そんなアホみたいなのやだね。」
「だよな~、じゃあアキ。これで決まりな。」
なんでオを省略するんだ?そんなことに何の意味があるのか分からないが、アッキーはもうアキと呼ぶことに決めたらしい。
「でさ、アキ。明日何する?」
私はゆっくりと立ち上がり、ボトルを床に置く。
「いや、ホント倒れているところを助けていただきマシテ、とても感謝しています。色々食わせてもらったし、なんか医者にも見せてくれたし、」
「いや、あれは近所のおっちゃんだ。」
「・・・まあ、ともかく色々してもらったし、わき腹も少し痛いしこれはおアイコにするから、これで失礼します、さようなら。」
そのまま出て行こうとする。
「おいおい、ちょっと待てって。どこ行くんだよ。なんかあったんだろ?それにこんな遅くにどこ行くつもりだよ。何かすることでもあんのか?」
立ち止まる。少し考えてから後ろを振り返った。
「何しようとしてたんだっけ?」


あの後、アッキーは「何?マジ?マジものの記憶ソーシツ?」なんていいながら散々ゲラゲラと笑い飛ばし、結局私はアッキーのこの部屋・・・家に泊まることになった。確かに何をしようとしていたかは思い出せない。でも名前は覚えている。本当の名前は佐々木浩二。なぜあの時偽名を言ってしまったのかは分からない。とっさに出てしまったのだ。
まずは明日考えようぜ、とアッキーが電気を消し、私もそのまま深い眠りに落ちた。
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