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色々なことを、気の向いたままに。
事象境界線
依頼の内容が変だった
2006年 03月 05日 (日) 12:30 | 編集
「すみません、もう一度言っていただけますか?」
「それはどう言う意味でしょうか。」

どうも否定的に受け取ってしまったらしい。言葉は、特に丁寧に使おうとすると・・
・やっかいだ。

「いえ、そういうつもりじゃないんです。えっと、まいったな。まず尊敬とか謙譲と
か丁寧語やめていいですか。実は苦手で。それじゃあ、言い直しますけど意味が良く
分からないんですが・・・その、」
「「私を探してください」ですが。」
「そう、それ。その「私」というのはあなたでしょ?」
「はい。」
「それならこの仕事は簡単だ。あなたーつまり「私」ーはそこにいる。探すも何もな
いでしょう?」

煎れた、でも少し冷めかけのコーヒーを少し飲む時間の後、彼女は静かにはっきりと
言った。

「違います。」

やれやれだ。今まで沢山仕事はしてきたが、これは今年一番いやこれまでの生涯で一
番の厄介事だ。仕事なら引き受けるし猫探しどころか蟻も探してやる。
今ココにないものを探すのは馴れているが、ソコにある、しかも目の前にあるに決ま
っているだろうものを探せとは・・・難題どころか意味すら分からない。嫌がらせか
?からかってるのか?

普段はいれないミルクを入れスプーンでかき回しながら考えていると、彼女が言葉を
続ける。

「引き受けていただけるのでしょうか。」

その唇からまつげまで真剣だ。
そう、だからすぐに断る訳にはいかない。それに失敗こそあれ依頼を断ったことがな
いのが私の唯一の皆勤賞だ。知り合いはそんなのにこだわらないで、もっと楽で報酬
を弾んでくれるヤツをやりゃーいいのに・・・と同情にも似た言葉を投げ掛ける。私
もとんだ大馬鹿者だ、告げる言葉は決まっていた。

「それでも引き受けるんだよ。」
「はい?」

つい独り言を言って言ってしまった。

「気にしないでください。引き受けます。ただしもう少し具体的というかいったい何
をしたいのかを分かりやすくはっきりして貰わないと無駄に費用が掛って迷宮入りで
すよ。もっとも私はそれでいいなら構いませんけどね。」
「初めてです。」
「は?」
「引き受けてくれるところ・・・」

話がうまく噛み合っていないが仕方がない。合わせるか。

「何件目です、ココ。」
「四箇所に断られました。」

だろうな・・・目頭を左手で押さえながらコーヒーをすする。ちなみにここは禁煙だ

さてどうするか・・・次の言葉を選んでいると、

「変わった請求方法ですね。」
「あ、ああ代金のことですか。初めは決め打やら成功報酬とかやってたんだけどねー
、こうあんまりうまくいかなくて。気に入りません?」

返事はしなかったが反対と言うわけでは無さそうだ。途中で遮られた思考を呼び戻し
具体的な話をどうやって進めるか・・・時間はたくさんある。今日は他の依頼も多分
こないだろう。ゆっくりやるか。
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